ほころびの果て、うたかたの虹 : 794.1 – Prequel

 いつか、世界が終わる日、というのを想像したことがあった。
 まさか自分が体験するとは思ってもみなかったけれど。

   * * *

 ある日の夕暮れ。
 どこが発生源なのかわからない轟音があった。

 やがて人々は異変に気付き始めた。
 何時間経っても、沈みかけた太陽の位置が変わらない。
 いくつかの種族が体調不良を訴え始めた。
 王国製のほとんどの機器が使えなくなった。

 数日くらいはなんとかなっても、数ヶ月となれば話は別だった。

 雨が降らない。
 川が干上がった。
 作物が枯れた。
 一部種族では死に至る者も出始めた。

 フェムトナーグの三大国と各自治区は、隣接世界への脱出計画を実行した。

 自分も「脱出しよう」と誘われた。
 けれど、この世界から離れることは、自分にとっては耐え難いものだった。
 しばらく考えさせてほしいと伝えて、ここに残ることにした。
 
   * * *
 
 ひとり、王都の時計塔に登る。
 数日前から鐘は鳴らなくなっていた。

 機人である時計塔の主は、錆びついた身体で部屋の隅に横たわっていた。
 彼が最後に見た景色は、誰もいない王国の景色だったんだろうか。

 ——さあ、自分はどうすべきだ。
 考える時間なら、たくさんある、はずだ。

To be continued…

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