※今回は若干本気で注意書き※

今回は一部の人がそれは可哀相な事になっています。
イジメではなくむしろご褒美として受け取って頂ければ幸いなのですが、
気分を害する恐れがある方は閲覧をお控え下さいます様、ご案内致します。
因みに、とりあえずセツ倫認可は下りました、とだけ。
妄想の産物ということで、笑って赦して頂けると幸いです。
そんな寛大な心の準備が整いましたら、どうぞスクロールしてお読みください。

by.オートマタ

　遠く遠く、辺涯の鐘の音を聞く冷たき夜が明く。
　差す陽光とは裏腹に、吐息を白く染める程の寒気に身が縮む。
　日に日に寒くなることを除けば、いつも通りの島の朝。
　これからうつつの世界に戻る者たちを迎えるべく、部屋の暖をとった。

　そうしてまたレジェンヴィスに、新しい一日が訪れる――


-Eternal Desire- Private Short Stories
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　Episode04.50　『ＤＡＩＬＹ？』
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「それじゃオートマタさん、行って来ます。あっ、今日も洗濯物とか、お願いしますね」
　我らがギルドマスター、セツナさんも出勤のお時間です。片手には、私とおんなじぐらいの大きさの、鍛冶道具がいっぱい詰まった重そうな鞄。
「了解ですよー、行ってらっしゃいませー」
　いつも通りのやりとりです。行ってらっしゃいませご主人様、とか一度ふざけてやってみたら、怒られましたし。アリだと思うのですけどねぇ……メイドさんキャラっていうのも。ほら、ほぼ毎日居て家事関連のお仕事はやっているのですから。
　……まぁ、たまにはふざけてみたいお年頃なのです、私も。
「さて――と。それじゃお掃除開始といきますか」
　やっぱりメイド服とか着てみましょうかしら……何て思っちゃったりしまして。自然とこの辺りのお仕事は、常にここに居る私の役目になっています。あと、チラホラここに居座ってる人と言えば……うん、そこで座ってふんぞり返ってるハイレオンさんとか、絶対掃除してくれそうにありませんしね。
「……あァ？何か言ったかい、人形の嬢ちゃんよォ」
　あ、起きてました。油断も隙もありません。
「何でもないですよー。ところで、ほら、お掃除始めますよ？ちゃっちゃと退いて下さい？」
「チッ……ゆっくり寝ても居られねェや。大体お前ェ、いつもいつも掃除に時間掛け過ぎなンだよ。もっと速く終わらせらンねーのか？」
　しょうがないじゃないですか、普通の人の1/3ぐらいの大きさなのですから。部屋の大きさも常人の３倍なのですよ。1/6じゃなかっただけマシだと思って下さい。
　ハイレオンさんがスゴスゴとロビーから出て行くのを見届けて、改めてお掃除開始です。この身体ですから本当に時間は掛かっちゃうのですけど――ほぼ一日掛かりですケド――、まぁ、好きでやっていることですから。

　ここに居る皆さんの様子とかも、見れますしね……

　　　　※　　　※　　　※

　１階部分の掃除が終わったところで、ちょうどお昼どき。二階や外に居た人がぞろぞろとロビーに戻ってきたところで、入れ替わりで私が二階に向かいます。
　こういうときに、嗜好以外の理由でモノを食べないで済む人形の身体が便利に思えます……あ、プリンは別腹ですけどね？
「あっ、オートマタさん。下の掃除が終わったんだね、いつもありがとう」
　階段ですれ違い際に、ラゼルさんが労いの言葉をかけて下さいます。
「いえいえ、とんでもないですよー、好きでやっていることですし」
「いや、いつも助かっているよ。――と、そうだ。また冷蔵庫にカボチャプリンを作って入れておいたから、後で食べるといいよ」
　よし、カボチャプリンゲット！　これだからお掃除は止められません。働いた後のプリンって、また格別ですし！
　ウキウキ気分で二階へ到達。さて、皆さんがお昼ご飯を終えて戻ってくる前に、せめて廊下のお掃除だけでも完了させませんとです。後にプリンが控えてると知って、気合は十分。
　そういえば、お昼になってだいぶ暖かくなって参りましたしね。動きやすいですし、これなら掃除も捗って、いつもより速く終わりそうです――

　トントン、と階段を上る音が複数。ちょうどお昼が終わった模様です。
「はむ、今ここを掃除中ですか」
「ごめんね、オートマタさん。掃除の邪魔にならないようにするから」
　背後から、アクラさんとユウちゃんの声。二人は共用倉庫でお調べ物中でしたか。
　ありとあらゆる物がごった返す共用倉庫。ここにはイススィールの古い文献や、過去の冒険者の記録を写したものとかも保管されています。様々な装備品の性能や、対峙するモンスターの対処法など、冒険に役立つデータが盛り沢山でしたり。結構貴重な文献とかも埋まっているみたいなので、ファイハーンさんとか見たらビックリするんじゃないかしら……と思ったりもするのですけど。
「いえいえー、私こそ邪魔にならないように、ぱぱっと掃除しちゃいますねー」
　ということで、ぱぱっと――と言っても倉庫は広いので、やっぱり１時間弱は掛かっちゃいますけど――終えて、次はお外の掃除です。そろそろお洗濯物も入れないとですしね。
　因みに、PT用の個室のほうは、個別管理ということで私は手出ししませんよ。ベッドの下に恥ずかしいモノとかあっても、見つけちゃうことは無いので安心して欲しいのです。
　――ふと、軽く開いたドアの隙間から、声が聞こえた気がしました。「Quiet*Notes」と看板が掲げられた部屋、中に居るのはラゼルさんが一人……ではなくて、サラマンダーさんも居ます。戯れているように見えますが……どうやらこれも、召喚士としての修行の一環だそうです。使役する精霊と仲良くなると、召喚魔法の威力も更に上がるんですって。
　本当なのかな……？

　あと、屋根裏から何か物音が聞こえた気がしますが、多分ネズミかプレアさんでしょうから、放っておきましょう。

　　　　※　　　※　　　※

　裏庭に干してあるお洗濯物を取り込もうと外に出ると、角からドタバタと物音が聞こえます。どうやら、肉体派な方々が庭先で鍛錬を積んでいる模様。覗き見ると、そこには竹刀さんと塀さんの姿。
「おら、全然当たらねーぞ、どうしたどうした」
「ム、ムウゥ……動きを捉えることが、できないでござる……！」
　何かおちょくっているようにしか見えない……のですけど、二人って何だかんだで仲良しさんなのですよね。よく一緒に訓練しているところを見かけます。この間は、裏庭側でドタバタされてお洗濯物を真っ黒にされたので、こっぴどく叱りましたけど。それ以降はちゃんと角で訓練するようになったみたいですね、感心感心。
　お洗濯物もぱぱっと――私専用脚立を使って――取り込んでいると、呼び鈴が鳴ったので急いで玄関口へ。あぁもう、忙しいです。
　どうやら、取引市場から出品商品の買い手が付いたとの事での、速報みたい。セツナさん宛てとノルクさん宛て……あとでコルクボードに貼り付けておきますか。
　そんな、てんやわんやの昼下がり。そういえば、ラゼルさん謹製のカボチャプリン、そろそろ食べておきましょうか。おやつにはちょうど良い時間ですしね……むふふ。

　至福の時を満喫した後、お洗濯物も全部取り込んで、最後に玄関口のお掃除を。最近は木枯らしが運んでくる枯葉が玄関口で山を作っていて、ここの掃除が一番大変だったりもします。外は寒いですしね……はふぅ……。
　こうして全部の工程が終わるころには、もう日が傾いて辺りは夕暮れ時。寒空にカラスが鳴いています。お出掛けした皆さんも、じきに戻ってくる事でしょう。そうして皆さん集まれば、レジェンヴィス内もまた賑やかになるのです。

　外で休憩中の竹刀さんと塀さんに――先ほど集めた枯葉で作った――焚火の番をさせて中に戻ると、既に中は賑やか――と言いますか、何やら言い争いが起きていません？
　玄関口の真ん前でで向かい合っている、一人と二人組。片方は邪神像を両手で抱えたアクラさんと、ちょっと身を引いた様子のユウちゃん。そしてもう片方、この後ろ姿は……
「そんな警戒すンなっての、別に床を共にしようなんざ言ってねェんだしよ。ちょいと呑みながら大人の話と行こうじゃねェか。嬢ちゃん等もいけるクチだろ？」
「そう言って酔わせて、あれな事しようとする魂胆が見え見えですよ。それに私お酒呑めませんから」
「私も……その、呑めるけど、今日は遠慮しておこうかな」
　あー、ハイレオンさんです。いつの間に戻っていたのですか、しかも既にお酒臭いですし…こんな夕方から。
　ダメですこの人、早くなんとかしませんと。
「おいおい、釣れねェな……ちょっとぐらい呑めるようになっといた方が、色々得ってモンだぜ？」
「はむ、大きなお世話ですよ」
　あ、邪神像の瞳の色が、変わった。
「そう釣れねェ事言うなって。何なら俺が、女っコにも呑みやすいヤツから教えてやるからよ――」
　そう言いながら、アクラさんの肩に手を回そうとしたハイレオンさん。――うん、この場所は危ない気がします、避難非難。次の瞬間、パチンと手を払ったアクラさんの掌から、禍々しい魔力がほとばしります。あの、ここ、建物の中――
「気安く触らないで欲しいですね――ダークレイド！」
「ホーリーレイド♪」
　しかもいつの間にかプレアさんが隣に居ますし。ノリノリで協力攻撃クリアリングを発動させちゃっていますし。もうやだこのギルド。
「おいバカ……っぶねェ！」
　襲い掛かる白黒の魔力を、寸でのところで横に逃げるハイレオンさん。その真後ろは玄関口だった訳で……うん、避難しておいて良かったです。――と、そこへ不幸にも……

　――ガチャリ――
「おーいオートマタ子、火が消えｔ――」

　――その日、私達が見た光景は、幻だったのでしょうか。
　まばゆい光に包まれたマイルーンのシルエットは、まるで光の中を舞う天使のように、神々しく見えたのでした。
　その儚くも美しい光景に目を奪われ、立ち尽くす私たち一同の中、ただ一人の声が響き渡るのでした……

「竹刀殿……！　大丈夫でござるかッ！？　竹刀殿ーッ！！！」

　　　　※　　　※　　　※

　遠く遠く、辺涯の鐘の音を聞く冷たき夜を迎える。
　吐息を白く染める空気を遮断する扉、その先にあるのは温かな暖かさ。
　それは、帰るべき場所に戻る者たちを迎える為の暖かさ。
　それは、日常が非日常である者たちが織り成す温かさ。

　そうしてまたレジェンヴィスの、賑やかな一日が幕を閉じる――


Episode04.50……ＥＮＤ