夢と夢
＋注意書き＋
by.ユテル
妄想爆発注意報が発令されました。
一般人の皆さんは至急避難してください。
また、耐性がある方でも、途中でなんらかの害を感じた時は素早く避難してください。
文才が一切ない素人のSSになっています。
ふつくしいSSを見たい方も、揃って避難をしてください。
ここ最近の連戦で、生傷や打ち身とか、筋肉痛も折り重なって地味に疲労困憊していた。
それはパーティのみんなも一緒で、皆が皆疲れきっている状態。
今日もなんだかんだで一日中歩き回った挙句、面倒くさい魔物に捉まったりで散々だったわけだ。
「…悪ぃ、ちょっと早めに休ませてもらうな…」
そういうと、まだメンバーが一階で作戦会議を立てている途中にも関わらず、俺はヨロヨロと二階に上がっていった。
ソファにドカッと横たわると、いい感じに意識が浮いてくる感覚。
階段からコツコツと音がする気がする。
ぎぃっとドアが開いて、誰かが俺を起こすような声がした。
けど溜まりに溜まった疲れからか、そのまま深い眠りについた。
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学校という所は、本当に何もかもがつまらなくて嫌になる。
毎日毎日、バカのひとつ覚えみたいに同じことの繰り返しで、いい加減うんざりしてるところだった。
「・・・なんか、いい事ねぇかな・・・」
今日も学校の屋上で、昼寝がてら午後の授業をサボる。
少し灰色がかった、雲のゆっくり流れる空をただぼーっと見てるだけだった。
蒸し暑くなってきたこの季節、屋上の地べたはひんやりして気持いい。
そんな冷たい地面を堪能していると、授業終了を知らせるベルが鳴った。
この授業が終わったら、あとはただ帰宅するだけだから楽だ。
まぁ、どうせ帰ってもすぐに出かけるか寝るだけだけどな…。
でかい欠伸をひとつすると、鞄を取りに教室へ向かった。
無造作に荷物を鞄へ突っ込んで、教室を出た瞬間、教師に呼び止められた。
「おいアープレス、さっきの時間どこへ行っていた？」
「・・・・・昼寝してました」
教師のこめかみに青筋が立っているのは、見なくてもわかった。
本当に面倒くさい。
面倒臭すぎて、どうになかりそうだった。
「いい家に住んでるからといって、我々教師、学校をナメ腐ってもらっては困るんだが？」
まるで弱点を掴んでいるかのような物言いで、半分笑ったような口調だった。
関わるのも鬱陶しいと思っていたが、今一番言われたくない事を言われた気がして、拳にぐっと力が入る。
「・・お言葉ですが、先生。俺の行動と家柄は一切関係無いんで・・・」
「さぁどうだかね。家でちやほやと甘やかされてるんじゃないのか？」
限界だった。
今、これ以上の言葉を言われたら、問答無用で目の前の人間を殴ってしまう。
直感して、全速力でその場から走って逃げた。
長い廊下を走って走って走って。
ふと気がつくと、普段使われていない校舎に来ていた。
イライラが胸から消えてくれない。
俺だって、好きであの家に連れてこられたわけじゃない。
なのに、周りはいつだってそうだから。
「・・・っクソが！」
立ち止まって、丁度真横にきたぼろい扉を力いっぱいに殴った。
？
その教室の中からか、返事が聞こえたような気がした。
こんなところに誰がいるというのか。
朱色の夕日がやけに差し込む不気味な廊下を見渡してみるが、人などいない。
やっぱりこの教室かと、意を決して扉を開けてみる。
「君さ、ノックにしちゃやけに激しいね。」
分厚い本の山が喋っている。
と、いきなりその本の山から白い頭がひょっこりと顔を出した。
この辺りじゃあまり見かけない、深紅の瞳がこちらを見てくる。
異国の奴か…？
「・・・あんた、こんなとこでなにしてんだ？」
「それはこっちの台詞なんだけどな？まぁ、適当にその辺に座ってよ。」
警戒しながらも、近場にあった椅子へ腰掛ける。
よくよく部屋を見渡してみると、召喚術だの魔方陣だの…怪しい本ばかり堆く積まれていて、内心しまったと思った。
こんな変な奴に捕まったら、何されるか。
早くこんな所をでて、帰ろう。
思っていることが顔に出ていたようで、クスクスと笑われた。
「君、いつも屋上で寝てるよね？ネクタイを見たとこ…３年かい？」
本を片手に読みながら、学年別で色が分けられたネクタイを指差してきた。
「色はともかく、なんで寝てるって知ってるんだよ…」
怪訝そうにたずねると、持っていた本をバタンと閉じこちらをじっと見てくる。
「…ははっ、まぁなんていうか…勘？そう警戒しないでよ。」
そういうと、意味有り気に笑いながら別の分厚い本を手に取る。
やっぱり、こういったタイプは何を言ってるのかわからん。
でも、目の前にいるこの怪しい眼鏡からは、他のウザイ連中らと同じ匂いがしてこなかった。
「なぁ…あんた、ここで何してるんだ？」
「うん？君にわかるように説明すると…精霊の召喚術やそういうのを調べてるんだ。」
やっぱり怪しい奴だった。
そこからはもう、そいつのペースで次から次へと意味不明な言葉が出てくる出てくる。
その日は、俺が止めてもずっとその調子だった。
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今日も屋上で昼寝する。
授業終了のチャイムはとっくに鳴り終わっていたけど、何故か今日はここに居たかった。
面倒臭すぎて、にっちもさっちもいかなくなっているのは進級しても同じで。
相変わらず回りの人間は、変にべたべたしてきてイライラするし。
ひとつだけ変わった事と言えば、まぁ変な奴だが友達と言える奴ができた事か。
ラゼルは学年も歳もいくつか上で、この辺の出身じゃないことやここへ来た理由なんかを話した。
もちろん聞くだけじゃ納得できないらしく、俺の身の上話もしなくちゃいけなかったけど…。
兎も角、今までの奴らとは違う本当の俺を見てくれる唯一の友達なのかもしれない、そう思った。
「今日は現れないと思ったら、もうとっくに授業は終わってるよ？」
起き上がり声のする方を見やる。
扉のほうでこっちをじとっと見るラゼルが立っていた。
「…なんだ、ラゼルか。今日は絶好の昼寝日和だから仕方ない」
こちらへ歩いてきたと思ったら、グーで軽く頭を小突かれた。
でも、今日はなんだかいつもと違う、少し暗い様子だった。
隣に座ったと思ったら、仰向けに寝転んで小さい声で呟く。
「大切な人が、さ。いなくなってしまったんだ。」
「前に言ってた、ラゼルの先輩の事…か？」
ラゼルには心から信頼し、慕っていた先輩がいた。
その人の事になると、とても楽しそうに話していた。
きっとそれはラゼルにとって、凄く大切な人なんだなと前々から思っていたけど。
その人がいなくなった…？なぜ？
深く聞いていいものなのかわからなくて、こういうときどうしたらいいか、うまい言葉がでてこなくて詰まっていた。
その沈黙を先に裂いたのはラゼル。
「…ずっと一緒に研究してきた召喚術の”カギ”を、イススィールという島で見つけたらしいんだ。
でも…俺は一緒に行けなかった。こちらの家族に迷惑をかけるわけにはいかないから。」
「こう…なんて言ったらいいかわかんねぇけどさ。ラゼルが今、どうしたいかが問題なんじゃないか？ついて行った方が……」
今の家族を思うラゼルに、俺は何を勝手なことを言ってるんだ。
言った後で後悔して、自分の髪をぐしゃっと指で巻き取った。
ラゼルへ顔を向ける事が何故かできなくて、暫くの無言が続く。
「ごめん、今日はもう帰るよ」
そう言って、ラゼルは静かに立ち上がって帰っていった。
「友達が辛い時に、なに言ってんだ…最低だな俺」
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その日は雨が降っていて、少し肌寒かった。
あのいつもの教室、いつもの屋上にラゼルが現れなくなってもう数週間が経つ。
無理もないか、軽はずみであんなこと言ったんだ、嫌われても文句は言えない。
学校へは来てるみたいで何度か見かけたけど、声をかけることができなかった。
今日は雨。
屋上に出てサボることはできない。
仕方なく授業を受けて、真っ直ぐに帰宅した。
出迎えた使用人から、無造作にタオルを奪い取ってそのまま部屋へ直行した。
濡れたシャツを脱ぎながら、ふと机の上のボロボロの指輪に目を奪われる。
「…こんな時、あいつなら助けてくれたのかな…」
あれ？俺、何言ってんだろ…。
─コンコン。
急にノックの音がして、使用人が一通の手紙を渡していった。
宛名は俺。差出人の名前はない。
気味が悪いそれを、無造作に破いて中身を確認する。
無地の便箋にたった2行。
「お前はセツナの腹違いの弟
騙していてすまなかった。」
混乱する中、文章の最後にかかれた父親の名前を見て、俺の中で一つの答えにたどり着いた。
思い立ったときには、すでに出発の準備はできていて。
学校や家のことなんてどうでもよくなっていた。
でも、ただ一つ気になったラゼルのこと。
何も言わずにいなくなったら、あいつの性格上気にするか…。
それよりも、同じ思いをさせちゃいけない気がする。
「…最後に、挨拶くらいしていくか。」
ただ一つ気になった。
今その兄貴がどこにいるのかという事だ。
昔と同じ場所に住んでいるとすれば、俺がここに来る前に住んでいたあの街。
兄貴と思われる奴と、昔遊んだ記憶が微かにある。
あいつは、そう……手紙と同じ『セツナ』という名前。
きっとあいつの家に行けば、もしかしたら会えるかもしれない。
ここからそんなには遠く離れていなかった気がする。
今から走っていけば、今日中には帰ってこれるか…。
全速力で家を飛び出した。
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だんだんと薄暗くなってきた森を走り抜けて、昔の記憶を頼りにその街に辿り着いた頃には、太陽はもうとっくに沈んでいた。
こんなに近くに居たのか。
自分が住んでいた空き家に着いて、懐かしむ間も惜しんで、兄貴の家を探した。
確か家の前に切り株のある…大きな木の下の…。
視界が開けたところに、その家はあった。
一階の窓から小さな灯りが見える。
きっとこの中に、俺の兄貴がいるんだ。
扉を軽くノックすると、中から耳の長い男が現れた。
昔みた兄貴にそっくりな風貌で、ただどこか違う気がした。
「あ…の、えっと…セツナさんはこちらにいらっしゃいますか？」
そう言うと、その人は驚いた表情をした後、少し考える素振りをした。
「……まぁ、とりあえず中に入れ。ずぶ濡れじゃねえか。」
多分、この人は兄貴ではない気がする。
ただなんというか、もしこの人だったらその…まぁそれは別にいいんだが。
言われるまま中に入ると、モソモソとバスタオルを出してきてくれた。
髪から滴る水を無造作に拭きながら、もう一度同じ質問をしてみる。
「それで、セツナさんは…」
「セツナならいねえよ。ここにはな。で、あんたはどちら様だい？」
「…俺は、その…昔の友達ってとこです」
なんだか、その人の目は俺の嘘を見抜いてるようだった。
ふぅん、と相槌のため息を吐かれると、気まずい空気が流れた。
どうしてここに居ないのか、そういう事が一気に聞けなくなってしまった気がした。
「…戦争に借り出されて、帰ってきたと思えば…馬鹿な迷信を信じて出ていっちまいやがった…」
戦争、その言葉だけで背筋がぞっとした。
そんなものに兄貴は…。
「あの、迷信っていうのは何なんですか？」
それから、少しだけ今までのことを話をしてくれた。
自分がセツナの叔父だったり、出て行くときの話とか。
長時間ではなかったけど、兄貴にちょっとだけ近づいた気がした。
ただ、行き先と思われるイススィールの島への行き方はわからないという事だった。
「それくらいだったら、自分でなんとか探します。今日は色々すみませんでした。」
イススィールの島。
どこかで聞いたことがあると思ったら、ラゼルの先輩が向かったという島だ。
兄貴も、その不思議な島へ行ったらしい。
そこに何があるのかわからない。
でも、もし兄貴が困ってるなら…俺は支えになりたい。
たった一人の、兄弟だから。
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辺りはどっぷり暗くなっていった。
雨がまだ降り続いていて、一向に止む気配はない。
前に一度だけ教えてもらったラゼルの家の前にきていた。
灯りがどの部屋からももれていて、中からは賑やかな声が微かに聞こえてくる。
迷って迷って、何度も家の前を往復して考えた。
ここへ来て。言うべきか、言わないべきか。
今の家族を大切にするラゼルを、また一人にさせていいものだろうか。
でも、やっとできた友に悲しい思いはさせられない。
大きな扉のノックベルを鳴らそうとしたとき、扉がガチャリと開いた。
驚いて一歩後ろへ下がると、なんというか物凄いタイミングでラゼルが出てきた。
「じゃあちょっと行ってきますね。
…え…ユテル…？こんな所で何して…」
もう後戻りはできない。
ラゼルの腕を掴んで、外へ引っ張り出す。
暗がりの中でも、しっかりと映えるその赤い目をじっと睨み付ける勢いで見やる。
「俺、会わなくちゃいけない人がいる。あんたの言ってた先輩と同じ、イススィールの島に。」
大きめの瞳をさらに大きくして、ラゼルが困惑するのがわかった。
「俺は会いに行く。今日は…その、別れを言いに来た。」
今までに見せたことがない真剣な顔で言うもんだから、冗談だとは思わなかったのだろう。
眉をぐっと顰めてこちらを静かに見るラゼルが、小さく頷く。
「…本気なんだね？途中で投げ出したりしたら、俺は許さないよ？」
「当たり前ぇだろ。俺はやっと、俺のしなくちゃいけないことを見つけたんだ。」
力強く頷き返すと、ラゼルも意を決したように続く。
「俺も君についていく。先輩に会いたいんだ。会ってもう一度一緒に研究をしたい。今の家族には、これからちゃんと話をするよ。」
これから何が待ち構えているのかわからない不安。
けどその眼には、あの時の変なラゼルはいなくなっていて。
やっとできた、本当の自分の目標だから、と。
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「……ル …テル！」
…？
誰かの声がする。
ゆっくりと瞼を開くと、カーテンの隙間から差し込む光に眉が寄る。
あれからすっかりソファを占領して眠っていたようで、横で兄貴がこちらを見ていた。
長い夢を見ていた。
ラゼルと出会ったときの事を、事細かに辿っていく夢。
なんで今更そんなの見るんだろう。
「もう！何時だと思ってるのさ？遅刻だよ、ち・こ・く！」
兄貴がむっと頬を膨らませながら、腕をぐいぐい引っ張る。
あぁー…今日は昨日話してた山へ登るんだっけか。
まだ所々傷が傷む身体をゆっくり起こすと、毛布が掛けられていた。
「…あ？毛布……、悪ぃな兄貴。」
「え？僕じゃないけど…自分でかけたんじゃないの？」
そういえば、昨日。
最後に聞こえていた声は…。
そうか…。
大きな欠伸をしながら兄貴と一階へ降りていくと、珈琲のいい香りがする。
手前のカウンターで、ラゼルとプレアが朝食をとっていた。
「あれ？俺の分は？」
珈琲をゆっくりと飲み干したラゼルが意地悪げに笑いながら一言。
「…生憎、遅刻魔に出す朝食は作ってないよ？」
「チッ、召喚オタクめ…。
毛布、ありがとうな！」
今日も忙しい一日が始まる。
-fin-